EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

フランス抗議デモ「黄色いベスト運動」を考える

こんなことになるなんて予想してなかったな・・・燃料価格の高騰、炭素税の引き上げに抗議して始まったジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)運動。細々と収束していくと思ったら、長期化する様子。11月17日から毎週土曜日ごとに行われるデモ活動は、参加者の数こそ、28万人➝17万人(11月24日)➝14万人(12月1日)と減ってきてはいるものの、逆に機動隊との衝突や商店・銀行などへの破壊活動は激化。パリ市内(参加者1万人)ではゲリラ化した「破壊屋たち」がところどころで車や建造物に放火したり、通行人やジャーナリストに突っかかっていったり、テレビで見てただけど、毎日通勤で通る道に黒いマスクをかぶったジレ・ジョーヌが闊歩していて、やっぱり怖かったです。

 

この黄色いベストを身に着けた人たちはきちんと組織立って活動している訳じゃない。グループや地方で分かれていたり、極右、極左の支持者やアナーキストが混じっていたり、グループ間で対立していたり。政府への要求もまちまちで、当初は炭素税引き上げに怒っていたのに、どんどんエスカレートしていて、今では購買力改善に向け「年金受給額の増額」、「最低賃金引上げ」を訴える人、「マクロン大統領の辞任」、「フィリップ内閣総辞職」を求める人など、まとまってない。だから政府が燃料価格引き下げに向けて炭素税引き上げ措置やエネルギー価格の値上げを廃止、エネルギー支出に対する手当の増額、燃費のよい乗用車への買い替え支援拡大など対応策を打ち出しても、ぜんぜん抗議活動をやめようとしないし、首相府にリーダー格のジレ・ジョーヌを招いて対話しようとしても、対話に積極的なジレ・ジョーヌを反対派のジレ・ジョーヌが脅したりして、対話に向けた動きもままならない状況のよう。12月8日もデモ抗議を続けるよう呼びかけています。一部は「大統領府に結集せよ」のメッセージをSNSで流している。また暴力、破壊が始まるのかなぁ・・・嫌だな。

 

暴力や破壊活動が激化しているにもかかわらず、12月5日に発表された世論調査の結果によれば、ジレ・ジョーヌ運動を国民の7割以上は支持しているんですよね。マクロン大統領の支持率も過去最低を更新しました・・・

 

もともとマクロン大統領の経済政策は企業寄りで、社会的弱者に対する政策が弱いといわれていました。彼の経済政策はサプライサイドなんですよね。就任早々、法人税のほか、企業に投資資金が流れやすいように富裕税を大幅に減税したのに、家計向けの減税は後回しになってしまった・・・まず企業に元気になってもらって、雇用や投資を増やして、収益が増えた分を働いている人に分配していく。そのロジックが国民に理解されなかった。信用されなかったっていうのが今回の抗議活動の背景にあるような気がします。

 

もともと大統領選でマクロン氏を支持したのは、エリート層、富裕層、大都市の住民、グローバル化の勝ち組っていう人たち。大統領選の第1回投票でのマクロン氏の得票率は24%で、投票者全体の4人に1人にも満たない支持しか得ていないのですね(極右ルペン22%、右派中道フィヨン氏20%、極左メランション20%)。棄権率が記録的に高かった決戦投票でも得票率が6割を超えたものの、反極右の票が流れて当選したようなもの。マクロン大統領のサプライサイドの経済政策プログラムを支持した人はほんとにエリートの少数派だと思うんです。それなのに、マクロン大統領は「公約通り」政策を推し進めてきました。ここにきて非支持者の反発・不満が一気に噴出したという感じがしています。個人的には最後まで改革を貫いて欲しいのですが、2019年5月の欧州議会選挙があるしな・・・ここは公約の一部撤回は仕方ないんでしょうね。次回の選挙で極右・極左政党が勝利するのを見るよりましかな・・・