EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

欧州議会選予測、南欧、中欧でポピュリスト政党がリード

5月末の欧州議会選挙に向け、加盟国各国で世論調査の結果が発表され始めています。やはりフランス、イタリア、ハンガリー、ポーランドなどではポピュリスト政党の支持率が高いですね。フランスの極右政党「国民連合」の支持率は20%で、マクロン大統領の政権与党「共和国前進」の23%に迫る勢いです。反政権運動「黄色いベスト」が出馬しなければ国民連合の支持率は21%に上昇することが予測されています(4月8日付けル・フィガロ紙発表)。イタリアでは「北部同盟」が30%、「5つ星運動」が28%と他の政党を大きくリード。ハンガリーはオルバン首相の政権与党「フィデス・ハンガリー市民同盟」が52%(!)、ポーランドは政権与党「法と正義(PiS)」が45%となり、中道右派「市民プラットフォーム(PO)」の34%を上回っています。***各国の最新の世論調査の結果はEurope Electsという団体のサイトで入手できす。https://europeelects.eu/european-union/ 

 

欧州におけるポピュリズム台頭の理由のひとつとしてよく指摘されるのが、欧州各国における「所得格差の広がり」。働いても生活が良くならない低所得者層の不安や怒りを、ポピュリスト政党のリーダーたちがEUや既存政党が悪いからだと巧みに責任転嫁した結果だというのです。欧州における所得格差について、「21世紀の資本」を書いて世界的に有名になったフランスの経済学者トマ・ピケティが所属する「世界不平等研究所(World Inequality Lab)」は、欧州は「医療や教育コストが低い」ほか、「社会扶助や税による所得再分配システムが機能している」ことで「1980年以降、世界の中でも最も所得格差の広がりを抑制してきた地域である。」しかし「欧州の社会モデルは欧州諸国間の税率引き下げ競争(累進性の緩和)の結果、侵食されている」といいます。法人税の最高税率(EU平均)は1981年49%から現在は25%まで低下する一方、消費税率は17%から21%に上昇し、低所得者層への税負担が重くなったからです。

 

欧州の中でも西欧、北欧に比べ、所得の再分配システムが非効率な南欧、東欧における所得格差の広がりが顕著なのだそうです。同報告書によれば、西欧では所得の再分配システムによりに所得格差のほぼ3割が是正されるが、南欧ではこの是正効果が23%、東欧では15%にとどまると試算されています。ポピュリスト勢力の強まりの背景にはイスラム教徒の移民流入によるアイデンティテイー問題のほかにも、再分配機能の低下といった構造的な要因もありそうです。