EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

ハンガリー国民は「西欧」を恐れている

非自由主義を信奉する欧州諸国を縦断し「ハンガリー・レポート」を上梓したベルナード・ゲタ(国際政治ジャーナリスト)に聞く(抜粋) ル・モンド紙 2019年3月29日

 

(問)ハンガリーを取材して驚いたことは何か

誰も(オルバン首相の)現体制(レジーム)を恐れていないということがわかった。私はモスクワで、トルコで今のエジプトで(国民が体制に見せる)恐怖を見てきた。ハンガリーでは(これはポーランド、オーストリア、イタリアでもそうなのだが)人々は怖がっていない。警察(監視)体制が通常示す兆候は全く見られない。街に民兵がたむろしているわけでもない。一方で、息苦しさがある。さらにハンガリーでは他の国よりも、この体制の信奉者たちによると西欧の絶対的な退廃を示す二つのサインである「イスラム教徒の移民」と「同性婚」に対するヒステリックの恐怖症(嫌悪感)が膨らんでいる。

 

(問)ハンガリーの国民はオルバンではなく、西欧を恐れている・・・

彼らが一部を構成していると考えてはいない「西欧」を大変恐れている。彼らが呼ぶ「西欧」とは自由民主主義のことだ。彼らの目には西欧は終焉したと映っている。欧州およびキリスト教のレジスタンスの砦は彼らしかいないと考えている。ここでいう「キリスト教徒」とは「イスラム教徒ではない」という意味でしかない。ハンガリーは完全に、フランスよりもさらに非キリスト教徒化している。彼らにとっては宗教の(違いが)問題ではなく、文明の(違いが)問題なのだ。それはオルバン主義を超越した問題である。キリスト教徒は国民の5割を下回るが、イスラム教徒の移民反対者は多数派だ。オルバン首相を汚職などほかの点について批判する人々を含めオルバン首相に対する寛大さはこれに起因する。彼らも移民への対応(EUが課した移民受け入れ分担の拒否など)についてはオルバン首相を評価しているのだ。

 

(問)西欧への反発は政権に近い知識層でシステム化されているというが・・・

それは今回の取材で私が脅威に感じたことのひとつだ。自由、平等、人権といった価値―フランス、アメリカ革命、欧州の啓蒙思想を否定することを正当化するために多くの知識人が深く、時に素晴らしい考察を行っている。これが(非自由主義を)「選択された権威主義」として正当化する背景にある。彼らは選挙により定期的に有効と認められるアンシャン・レジームへの回帰を求めている。