EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

欧州議会選挙で躍進が予想される極右政党グループ

欧州で台頭する極右・ポピュリズム政党。欧州議会で彼は結束し、一大勢力となるのでしょうか。その可能性が高まっているように見えます。

 

10月8日、極右「国民連合」のマリーヌ・ルペンはローマで極右「北部同盟」のマッテオ・サルヴィーニ内相と会談、「我々は移民、セキュリティー、国家主権といったファンダメンタルな価値観を共有しており、この価値観をベースに新たな会派をつくる」として、欧州議会選挙後、議会で多数派となるためのアリアンス作りで協力することで合意しました。サルヴィーニ内相は8月末にも、『非自由主義』を訴えるハンガリーのオルバン首相とミラノで面談。「移民を支援する」マクロン仏大統領を共通の政敵と定め、欧州選挙での勝利に向け共同戦線を張ることで合意していました。彼らが主張するように欧州議会選挙で各国の極右政党リストが躍進し、結束することになれば、欧州議会で「反移民」や「各国が主権を持った国家の集合体としての欧州」を提唱する一大勢力が生まれることになります。

 

現在の欧州議会の会派構成(総議席数751議席)をみると、最大政党である保守「欧州人民党グループ(EPP)」(仏「共和党」、独「キリスト教民主同盟」などが所属)が219議席、左派「社会民主進歩同盟グループ(S&D)」(仏「社会党」、独「社会民主党」など)が188議席、これに英国の保守党出身議員が中心となる「欧州保守改革グループ(ECR)」が73議席と続きます。

 

仏「国民連合」、イタリア「北部同盟」、オーストリア「自由党」、オランダ「自由党」など極右・ポピュリズム政党が所属する「国家と自由の欧州(ENL)」の議席数は35議席で少数派ですが、EPPに所属しているオルバン首相の出身政党「フィデス・ハンガリー市民同盟」(11議席)が欧州議会選挙後、極右政党会派に加わるとの見方が強まっています。EPPの中でオルバン首相が孤立を深めているからです。欧州議会は9月12日の採決で、オルバン首相が進める選挙制度・憲法改正がEU理念に反するとして制裁手続きに入ることを決定。欧州委員会のユンケル委員長は2018年10月13日付けル・フィガロ紙のインタビューで「EPPにもはやオルバン氏の居場所はない。私は彼をリスペクトしているが、彼の言動とEPPがベースとするキリスト教民主主義の価値観は相いれない」と明言しました。

 

ハンガリーの保守政党がEPPを去る・・・フィデスと政策路線をほぼ同じくする中欧の保守系政党もこの動きに同調するかもしれません。中欧の中でもハンガリー(21議席)、チェコ(21議席)、スロバキア(14議席)に比べ欧州議会における議席数が多いポーランド(52議席)の保守政党の動向が注目されるところです。ナショナリズムを押し出した保守与党政党「法と正義(PiS)」は英国の保守党出身議員が軸になって形成する保守政党グループ「欧州保守改革グループ(ECR)」に属していますが、この英国議員を中心とするECRは英国のEU離脱に伴い消滅することから、PiSの議員(現在は18人)が宙に浮いた状態になるためです。

 

ポーランドのもうひとつの保守政党で、ドナルド・トゥスクEU大統領の出身政党である中道保守「市民プラットフォーム(PO)」がすでにEPPに所属していることや、欧州委員会がPiSが策定した司法制度改正法案を巡り制裁手続きを進めていることなどから、PiSは極右会派と組む可能性が強いとみられています。このため「すでに欧州議会の周辺では極右勢力は欧州議会選挙後、EU機構を停止させることができるほどの力を持つとみる声が出ている」(2018年9月19日付けル・モンド紙)ようです。

 

極右・ポピュリズム政党グループが保守EPPを超える多数派になるとの見方は今のところないようですが、極右・ポピュリズムの声が欧州議会で益々強くなるのは間違いないようです。