EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

EUのドイツ化進む?

仏「リベラシオン誌」に欧州政治コラムを持っているジャン・カトルメール記者。2018年のEUインフルエンサー・ランキングで第3位に入りましたね。隠れファンなのでうれしいです。彼のドイツに対する見方は厳しくて、「EUのドイツ化」を懸念する記事をよく書いています。メルケル首相が2021年での政界引退を発表した際には、「親愛なる論説記者たちへ、マクロンがメルケルという最良のパートナーを失ったと書くのは、やめてくれ。冗談じゃない!2007年以降のメルケルはEUにとり、どうしようもないほど破壊的な存在だったじゃないか。彼女は欧州について何らかの見解を持ったことなんかないし、ユーロ圏の危機を引き起こした責任は彼女にある」(10月25日)とツィ―ト。EU構築に関わるメルケル不能論を繰り返していました。

 

こういう見解をもったフランス人識者は少なくなく、欧州問題研究機関「ロベール・シューマン財団」のジャン=ドミニーク・ジュリアーニ氏は『メルケルは本当に親EU派であったことはない。リスクをとることを厭わなかったヘルムート・コール前首相と対照的に、メルケルはドイツの国益を守るために動いてきた。彼女の欧州ビジョンははっきりせず、いつも受け身で、移民などの危機に対応してきただけだ』と指摘しています。さらにジュリアーニ氏は『CDUの党首にクランプカレンバウワー幹事長が就任すればフランスにとり間違いなくグッドニュースになる。ドイツはやっとマクロン大統領の構想に答えることができるようになるかもしれない』(10月31日付けル・フィガロ紙)とも。メルケル引退を歓迎するような口ぶり・・・

 

メルケルのドイツが自国優先主義でEUビジョンを持たないとする一方、EU機構は逆にドイツが支配、しっかり権力を掌握することで、EUがドイツの思想・国益を反映するしくみになっているというのが、カトルメール記者の主張です。確かに、EU機構のトップはドイツ人が多い!政治面では欧州委員会の事務局長(マルティン・ゼルマイヤー)のほか、欧州議会における二大会派グループの代表(欧州人民党のマンフレート・ウェーバー、社会民主進歩同盟のウド・ブルマン)、金融・財政関連では欧州投資銀行(ヴュルナ・ホイヤー総裁)、欧州安定メカニズム(クラウス・レグリング総裁)、単一破綻処理委員会(エルケ・ケーニヒ委員長)、欧州会計監査委員(クラウスハイナー・レーネ委員長)とドイツ人ばかり。これでマンフレート・ウェーバーが欧州委員会のユンケル委員長の後任として選ばれれば、さらにドイツ色強まる!

 

なんだか知らず知らずのうちにEUのドイツ化が進んでいる感じ。フランス人を含め、こういう事実を知らない欧州市民は多いと思う。「欧州市民は本当にドイツ人に統治されることを望んでいるのか?(カトルメール記者)」どうなんだろうね?