EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

ドイツ、EU改革エンジンがストップ

10月14日に実施される独バイエルン州議会選挙。極右「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進で、ドイツ連邦議会でメルケル首相の「キリスト教民主同盟(CDU)」と統一会派を成すバイエルン州の地域政党「キリスト教社会同盟(CSU)」は大きく議席を落とすと予想されています。メルケル首相が率いるCDU/CSU、社会民主党(SPD)の連立政権内で内相を務めるCDUのゼーホーファー党首はメルケル首相の移民政策を批判。先日、東部ザクセン州ケムニッツで起こった外国人排斥を訴え、外国人狩りの暴動に発展したデモを擁護する発言を行って物議を醸しだしましたね。連立政権の崩壊を予想する声も強くなっています。2017年9月のドイツ連邦議会選挙から1年、連立政権の発足から半年・・・メルケル首相がここまで弱体化するとは思っていませんでした。

2017年5月。マクロン大統領は就任後すぐにドイツを訪問し、メルケル首相とともにEU再建に向け会談。メルケル首相を前にEU構想を語った、あのマクロン大統領の熱い記者会見の様子が思い出されます。EU再建を選挙公約したマクロン大統領には大きな痛手でしょう。ドイツが極右・ポピュリズムの台頭で「ドイツ・ファースト」に傾倒するなか、マクロン大統領の欧州再構築構想は構想のまま終わってしまうのではないかとの懸念が強くなっています。

9月20日付けレゼコー紙は「仏独エンジン、ベルリンは動かない」と題した記事の中で「マクロン大統領に運がないのは確かだ。彼が権力を握ると同時に、ドイツは政治不安に陥った。ドイツ総選挙とその後の政権樹立に向けた協議期間中、EU再建の議論は持ち越された。貴重な時間が失われたのだ。そのことを我々は今になって思い知らされている。欧州議会選挙が近づくなか、欧州で政治勢力の急進化(先鋭化)傾向がみられる。EUが解決しなければならない問題について加盟国から譲歩を引き出すのはより困難になった。EU改革の具体的な前進の成果を手に欧州議会選挙を迎えたかったマクロン大統領は、再度プロジェクトを提示するだけに終わりそうだ」と分析しています。

もともとEU建設は独仏の2か国が牽引してきたもの。いくらマクロン大統領がEU再構築に向けた具体的なプロジェクトを提案しようとも、ドイツ政府が動かないのであれば頓挫してしまいます。EU再建構想の柱であるユーロ圏改革について「ドイツはユーロ加盟国だけでなく、EU加盟国全体で議論することを望んでいる。一部の有識者はこれをドイツの『ユーロ圏改革を前進させない意思の表れ』と捉えている。」つまり、ドイツはマクロン大統領が提案するユーロ圏改革を表面上支持しつつ、実際には2018年7月のEU財務大臣会談で北欧8カ国が発表したユーロ圏改革反対声明を利用し、マクロン大統領の改革の動きを止めようとしているということなのです(北欧8カ国のうちデンマークとスウェーデンはユーロに加盟していません)。

またユーロ圏改革の目玉である「ユーロ圏共通予算の創設」についてマクロン大統領は2018年6月の独メセベルグでの二国間政府会議でドイツ政府から「共通予算」という言葉を使うことで譲歩を引き出したものの、マクロン大統領が提案していた「ユーロ圏のGDPの数%ポイントを予算に充てる」という具体的な数字については合意を得られなかったほか、「その後、何の議論もされていないし、欧州議会選挙を前に2018年末までに前進があるとは考えられない」とみられています(9月26日付けレゼコー紙)。

これじゃうまくいくはずないな・・・マクロンのEU改革。独バイエルン州議会選挙の結果が待たれます。