欧州議会選挙に向け、マクロン大統領の「反極右」「反ポピュリズム」の戦いが始まった!
2017年5月の仏大統領選で「EU再構築、極右・ポピュリズム打倒」を公約して当選したマクロン大統領。2019年5月の欧州議会選挙に向けた彼の動きが活発になっています。公約実現のためには何がなんでも欧州議会選挙で彼の「欧州構想」を支持する政党が多数派となってくれなければ困るからです。
先週は8月28~30日にEU加盟国フィンランド&デンマーク(ユーロ非加盟国)の北欧2か国を訪問しました。フランス共和国大統領がフィンランドを公式訪問するのは19年ぶり、デンマークを訪問するのは実に36年ぶりのこと。
実はフィンランドもデンマークも2018年3月に北欧8か国の財務大臣がまとめたEU再構築案にサインしていて、その中でマクロン大統領がドイツのメルケル首相を巻き込んで実施しようとしているユーロ圏予算などの抜本的な改革に反対しました。
今回の北欧2か国訪問は「フランスが提案するEUおよびユーロ圏の改革プロジェクトについて首脳や国民と率直に対話すること(マクロン大統領)」で北欧2か国を味方につけたい意向があったんですね。
一方、マクロン大統領が北欧訪問に出発した28日は、イタリア極右「北部同盟」のマッテオ・サルヴィーニ内相と非自由主義を宣言したハンガリーのヴィクトル・オルバン首相(保守派)がミラノで会談。「現在の欧州には、マクロン大統領が率いる移民を支援する政治勢力と、不法移民の流入を食い止めようとする我々の勢力がある」とし、両者はマクロン大統領を共通の政敵と定め、欧州選挙での勝利に向け共同戦線をはることで合意しました。彼らは「反EU」「反移民」でポジションが一致しているのです。
共通の政敵と名指しされたマクロン大統領は外遊先のデンマークで同日、「国家主義者やヘイトスピーチを賞賛する者たちに屈しない」と応酬したのですが、心の中では「ヤッター!こういう挑発を待ってたんだぜ!!」と叫んでいたようです。
ル・モンド紙は9月1日付けの論説でオルバンとサルヴィーニの共同声明は「マクロンにとり願ってもない贈り物となった。マクロンが進歩主義と呼ぶ親EU派と国家主義(反EU派)の対立は選挙戦に向けマクロンが望む対抗軸だ。マクロンの戦略は明らかだ。2017年の大統領選挙が極右・ポピュリスト政党のマリーヌ・ルペン党首を破ることに成功した対抗軸を欧州レベルの選挙でやろうとしているのだ。メルケル首相の政治力が弱体化するなか、欧州のポピュリストと対抗する進歩主義者を統合して選挙に向かおうとしているのだ」と分析しています。
極右・ポピュリストに勝つためには、市民が懸念する移民や治安問題について具体的で効き目のある政策プログラムの提言が必要でしょう。フランス大統領選でも、ルペン党首が「反EU・反ユーロ」のスローガン提示に留まったのに対し、マクロン大統領は具体的な政策プログラクを提示、選挙キャンペーンではひとつひとつの政策をクリアに説明することに力を入れ、当選後は同プログラムにある政策を実行することを公約しました。EU27か国は例えば移民問題について具体的で有効性がある政策措置を加盟国承認のもとに提示できるのでしょうか。そして欧州市民をうまく説得することができるのでしょうか。