EUとユーロの未来を考える

激動の欧州に暮らすピノピノさんのブログ。EUとユーロの未来を占うニュースをセレクトします。

「極右・ポピュリズム打倒」を誓うマクロン大統領が打ち上げた欧州構想って何?

難しい・・・EUって難しいわ。欧州に住んで20年のピノピノさん。EUやEU加盟国について何も知らない・・・っていくことにこのブログを書こうと思いついてからやっと気づきました(汗)。いろいろネットで調べたんですけど、実は今もすっきり整理できていません。一般の欧州市民でEUについてきちんと説明できる人ってどれぐらいいるんだろ。EU理事会や欧州議会で何が議論され、何が決められたのか、なんて気にする人は少ないし、メディアもきちんとわかりやすく報道していないですね。

欧州議会選挙(各国別直接選挙、比例代表制)だって、前回の選挙でフランスの棄権率は6割。基本、皆さん関心低いです。欧州市民なのに、EUに対して遠い目をしてみてるところがある。もちろんピノピノさんにもその理由はわかります。自分が日常で直面する問題ってEUは解決してくれないじゃないですか。自国の政府、自分が住んでる市町村の議会で決められたことの方がずっと大事です。生活に直結するから。

そういう一般市民の認識を欧州再構築によって変えようとしているのがマクロン大統領のEU再構築なのかなと考えています。彼は2017年9月のソルボンヌ大学での講演で「より主権的で、より統合した、より民主主義的な欧州」というビジョンを打ち出します。その中でEUと市民の距離がここまで広がってしまった理由として「近年の(債務、金融、移民、治安などの)欧州危機は加盟国間における政策協調の不足を示すものだ。例えばユーロ圏は(ギリシャ危機などの)金融ショックに対応する有効な制度(欧州通貨基金、ユーロ圏予算など)を持たない。そのため、危機に直面するたび各国の政治家たちはEU・ユーロ圏の機能不全に責任を押し付けてきた。その結果、欧州市民にEUに対する不信感を植え付けることに成功したのだ」と分析しています。

また2018年8月末の外交方針を説明する演説の中でも「欧州全域で不信感が広がる。ブレグジット、極右・ポピュリズムの台頭、移民に関わる西欧・東欧の分裂、財政問題に関わる北欧・南欧の亀裂はその不信感の表れだ」とし、この不信感を取り除くためには「欧州主権の確立が唯一の解決策だ」と主張します。つまり極右の人たちが主張するように「移民が問題の温床」なのではなく、移民問題にせよ、金融危機にせよ、加盟国同士が連帯の意識を持ってしっかり協調して政策を施行すれば問題は解決できるという立場です。そして加盟国間の連帯システムを強化するためにEUの改革が必要だとするのです。

とくに①移民・治安・国防、②金融危機への対応(ユーロ圏予算とか欧州通貨基金とか)、③(アンチダンピング措置や外資規制など通じ欧州企業・産業を)守る欧州、④持続可能成長、⑤デジタル(データ保護、イノベーション促進)分野は、各国の国レベルで政策を決定するのではなく、EUレベルで政策を決め、実行すべきであるとします。こうした分野では「欧州主権が必要になる」というのです。そしてEUがこの「欧州主権」のもとに様々な問題を適切に解決していけば、市民のEUへの不信感が減り、極右やポピュリズムを支持する動きも収まると主張します。

彼は2017年の大統領選挙で極右に勝利した独自の戦略に自信があるのでしょうね。大統領選で決選投票まで駒を勧めながら、「反EU・反ユーロ」について具体的な政策を打ち出せなかった極右マリーヌ・ルペン党首は、早くから明確な政策プログラムを打ち出したマクロン氏に敗れ去りました。マクロン大統領は8月末はコペンハーゲンで、9月に入ってルクセンブルグで市民討論会に参加し、自身のEU構想を英語で直接、市民に話しかけました。欧州議会選挙でも大統領選同様、明確なプロジェクトをわかりやすく説明していけば、極右・ポピュリズムに勝てると考えているのはないでしょうか。